「高齢女性のクレームによって宿泊ホテルを用意? 堺市が公金を不適切に支出か」

「高齢女性のクレームによって宿泊ホテルを用意? 堺市が公金を不適切に支出か」

𠮷川晃司のコメント

この記事は、公共工事における地元住民のクレーム対応と、それに伴う工事費用の増額問題を取り上げています。堺市が一人の高齢女性住民からの度重なるクレームに対応するために、ホテルの手配や工事費の異例の増額を行った疑いがあると報じられています。この事例は、公共事業の運営と地元住民との関係、そして税金の使用に関する重要な問題を提起しています。

まず、地元住民のクレームに対してホテルを手配するなどの特別な対応を行ったことは、一見すると住民への配慮とも取れますが、公共資金の使用に関しては、その妥当性や透明性が問われます。特に、公共工事の費用を増額してまで個別のクレームに対応することは、他の住民や税金を支払う市民に対して公平であるべきです。

また、工事費用の増額については、労働単価の計算方法を変更して行われたとのことですが、このような手法が適切であったかどうか、またそのプロセスの透明性についても疑問が残ります。公共事業における費用の算定は、一般的に厳格な基準に基づいて行われるべきであり、特例的な対応が行われる場合には、その理由や根拠が明確にされる必要があります。

さらに、情報公開請求に対する堺市の対応にも問題があるようです。議事録などの公文書に関する情報が適切に開示されなかったことは、行政の透明性と信頼性を損なう行為であり、市民の知る権利を侵害する可能性があります。

この記事から浮かび上がるのは、公共事業の運営における透明性、公平性、そして税金の効率的かつ適切な使用に対する市民の期待と要求です。公共事業は市民の利益のために行われるべきであり、その過程で発生する問題に対しては、責任ある対応と説明が求められます。堺市がこの疑惑にどのように対応するか、今後の動向が注目されます。

 大阪府堺市が公共工事を巡り、地元住民からの度重なるクレームなどを受け、ホテル確保などの便宜を図ったり、請負業者に支払う工事費を異例な形で増額している疑いがあることが「週刊文春」の取材でわかった。

大阪府の中南部に位置する堺市は、約80万人の人口を擁する政令指定都市。大阪維新の会顧問でもある永藤英機市長(46)は「身を切る改革」を掲げ、税金の使い道に厳しい視線を注いできた。

「永藤氏は大阪府議を2期務めた後、2019年の市長選で初当選。任期満了に伴う6月4日投開票の市長選に再選を目指し、立候補する意向を表明しています」(府政担当記者)

水道工事の間、クレームを繰り返す高齢女性にホテルを手配

その堺市役所内で、有名な高齢女性がいるという。

「70歳前後とされるAさんです。よく愛用のシニアカー(高齢者用の電動カート)に乗って役所に現れ、早口の関西弁でまくし立てる。ガスでも水道でも工事を見つけると、すぐクレームを入れます。Aさんの携帯からの電話は出ないようにしても、別の番号から電話がある。職員が水をかけられたこともありました」(堺市役所の現役職員)

Aさんが住む団地前で、堺市上下水道局が発注した配水管の布設工事が始まったのは、2021年6月頃のことだった。

「案の定、Aさんから『水道工事はやめて』『なんで(問い合わせ先が)ナビダイヤルの電話やねん。待ってる間に電話代かかるやろ』『夜寝れへん』などと抗議が入りました。他にも、『私が怒ったらすぐに職員は帰るやろ』『水道局はいっつも上から目線や』と職員の対応ぶりに文句を言ってきたり……。それで、『工事はやめろ』と同じ話を延々繰り返す。水道局では、彼女の度重なるクレームをまとめたメモも“行政文書”として作成。それで請負業者と相談し、特別にホテルを確保することになったのです」(水道局員)

請負業者が明かす。

「Aさんの抗議で3カ月ほど工事は止まり、年末に約1カ月ホテルを手配した。工事の中断のコストも含めて、数十万円かかった。公共工事の費用で『ホテル代』とは書けない。色んな工事費に混ぜて処理したと思う」

実はこの過程で請負業者に対し、異例な対応がなされていた。「週刊文春」は、堺市役所に配水管布設工事などに関して、情報公開請求を実施。開示された黒塗りを含む文書を基に、別の水道局員に尋ねると、こう口を開いた。

労働単価の独自の計算式を編み出して支払い工事費を増額

「流石に工事を中止するのは無理でしたが、近隣に配慮し、元々の契約では夜間施工だったのを昼間施工に変更した。交通の便などに大きな影響が出るものの、夜間のほうが単価は高いため、業者に支払う工事費は減額される。ところが、その減額分を穴埋めするかのように増額して支払っているのです」

一体、どんなスキームを取ったのか。

「一般的に一日の労働時間は8時間以内です。国交省土木工事標準積算基準では、時間的制約を著しく受ける工事(1日4.5~7時間しか作業できない)の場合、労務単価を1.14倍に割り増しすると定められている。この倍率を補正係数と呼びます。今回は事実上、施工時間は“昼間の5時間だけ”と時間的制約を著しく受けるため、規定通り1.14倍を適用すべきでした。ところが「1.14が“≒8÷7”なので、5時間の場合は“8÷5=1.6”という独自の計算式を編み出し、労務単価を1.6倍まで割り増ししたのです。つまり、補正係数は1.6となり、支払う工事費も増えます」

結果、業者に支払う工事費が450万円ほど増額されたというのだ。

「こんな計算式は使ったことが無い。Aさんのホテル代捻出のために工事費を上積みしたのでは、との疑念も出ています」(同前)

国交省建設システム管理企画室の担当者も首を傾げる。

「国の基準を準用しているとはいえ、あくまで決めるのは自治体。ただ1.14という補正係数を変えるというのは、あまり聞いたことがありません」

また、配水管布設工事などに関する堺市への情報公開請求を巡っては、「週刊文春」は、工事監督記録簿や工事打合せ簿、住民対応などを記録した議事録について請求していた。ところが、「公開決定通知書」からは、そもそも議事録についての回答が無く、工事監督記録簿や工事打合せ簿などについてのみ、一部黒塗りのうえで開示された。つまり、議事録については情報公開請求されていたにもかかわらず、堺市役所は無かったことにしていたのだ。

Aさんはホテルの便宜について「それ、あかんでしょ」

Aさんに話を聞いた。

――水道工事がうるさい?

「決まってるやろ。(配水管の布設工事が)昼になってもっと渋滞して。水道局って頭おかしいねん。二十何年住んでいるけど、ずっと工事なんや」

──堺市がホテルを用意した?

「それ、あかんでしょ、税金でそんなこと。誰が言うてんの? 私、水道局と仲良くないから。もう訪ねてくんの、やめといて」

各種の疑いについて市役所の回答は…

堺市役所に事実確認を求めたところ、書面で次のように回答した。

「(補正係数を1.6に変更し、不適切に工事費を約450万円増額した疑いについては)近隣住民に極力ご迷惑をおかけしないように、先行している他工事(ガス工事)の事例を踏まえて施工時間を昼間の5時間としています。水道工事の特性上、掘削から管入れ、埋戻までを5時間以内で施工する配水管布設工事において、補正割増し係数を1.6にして変更契約したことは適正であると考えています。

(Aさんのホテル代を公金から支出した疑いについては)契約変更にあたっては適正に積算を行っています。ホテル代等を捻出するために、補正割増し係数を変更した訳ではありません。施工業者がホテルを手配したことは承知していますが、その費用を公金から支出するなど特別な扱いは行っていません。

(Aさんからの抗議については)近隣住民からのお問い合わせ等に対して、電話を取らないなどの不適切な対応はしていません。また、近隣住民からの主な要望や対応内容等は、議事録で記録しています。

(Aさんに関する議事録の請求を無かったことにした理由については)公文書公開請求にかかる請求者とのやり取りのなかで、担当者が請求内容等を適切に把握することができず申し訳ございませんでした。改めて対応させていただきますので宜しくお願い致します」

担当者は「一日5時間の工事というのが異例」

その後、担当者に「補正係数を1.14から1.6に変更した前例があるのか?」と確認を求めたところ、以下のように回答した。

「一日5時間の工事というのが異例なんです。前例はありません」

公共事業に詳しい法政大学の五十嵐敬喜名誉教授が指摘する。

「もし自治体が、住民個人に特別な補償を行うのなら、騒音が受忍限度を超えたことを裏付ける客観的な記録などを示す必要がある。税金が投入されているのなら、合理的かつ透明性のある説明が求められます」

税金の使い方に厳しい視線を注いできた永藤市長が、今回の疑惑にどのように対応するのか、注目される。

3月22日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および3月23日(木)発売の「週刊文春」では、2021年の配水管布設工事を巡る問題のほか、2022年の舗装道路復旧工事を巡って堺市役所がAさんのホテル確保に奔走する様子などについても取り上げている。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年3月30日号)

維新府議(2期)を経て、2019年に当選した永藤市長 ©時事通信社

(出典 news.nicovideo.jp)

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