故意でも過失でも、損害賠償責任は「発生する」
Q.今回の宿泊先の旅館で障子を破る、胴上げをして天井を破るといった行為は、どのような罪になるのでしょうか。
牧野さん「故意に他人の物を損壊していますので、刑法261条の『器物損壊罪』となり、3年以下の懲役または30万円以下の罰金、もしくは科料に処される可能性があります」
Q.「器物損壊罪」は故意や過失で罪の重さが変わるのでしょうか。どこからが故意で、どこまでが過失になるのか、ラインはあったりするのでしょうか。
牧野さん「器物損壊罪は故意(意図的な行為)であることが必要ですので、過失(不注意)で他人の物を壊してしまった場合は罪に問われません。
器物損壊罪は、故意(意図的な行為)であっても告訴がなければ公訴を提起することができない『親告罪』のため、被害者が告訴しなければ起訴されず、刑事事件となることはありません。しかし、話し合いによる解決が決裂すれば、旅館側が告訴して、刑事事件で刑罰(3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料)を受ける可能性があります。
ただし、民事責任については、故意であろうが、過失であろうが、他人の物を壊してしまった場合には、民法709条の不法行為に基づき損害賠償責任が発生するため、壊した物の損害を賠償する必要があります」
Q.仮に学生が在学時に罪を犯した場合、将来にどのような影響があるのかも教えてください。
牧野さん「旅館側が告訴し、刑事事件で刑罰(3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料)を科される場合には、いわゆる『前科』がつくことになります。就職活動で履歴書を提出する場合、賞罰項目で犯罪歴の記載が求められますし、また医師や看護師、弁護士などの免許申請や海外旅行時のパスポート・ビザ申請に支障が出る可能性があります」
今回のケースでは、大学側は旅館に謝罪し、話し合いも続けているという報道もあります。学生だからといって度を超した“悪ノリ”をすると、将来にリスクを負う可能性もあります。これから新たな生活や旅行へ行く人もいるでしょう。楽しい思い出になるよう、節度をもった行動を心掛けるようにしましょうね。
オトナンサー編集部
学生の不適切な行動とその法的な影響について重要な議論を提起しています。神戸大学の非公認サークルによる旅館での器物損壊行為は、単なる若気の至りとして片付けられない深刻な問題を浮き彫りにしています。SNSでの拡散は、瞬く間に社会的な非難を引き起こし、加害者たちに対する法的な責任を問う声が高まっています。
牧野和夫弁護士によると、このような行為は「器物損壊罪」に該当し、故意によるものであれば刑事責任を問われる可能性があるとのことです。特に、故意と過失の区別、親告罪の性質、そして民事責任についての説明は、一般の人々にとっても非常に教育的な価値があります。これらの情報は、法律の枠組み内で自分の行動がどのように評価されるかを理解する上で役立ちます。
さらに、将来に対する影響についての指摘は、特に若い人々にとって重要な警鐘です。犯罪歴が就職活動や免許申請、さらには海外旅行の際のビザ申請にも影響を及ぼす可能性があることを理解することは、一時的な楽しさが将来に及ぼす長期的な影響を考える上で重要です。
この事件は、楽しい思い出を作るための行動が、どのようにして自分自身や他人に対して深刻な結果を招く可能性があるかを示しています。節度ある行動とは、自分の行動が他人にどのような影響を与えるかを考慮し、社会的な責任を自覚することを意味します。この事件を教訓として、特に学生や若者たちは、自分の行動が個人的なレベルだけでなく、社会的なレベルでどのように受け止められるかを深く考える機会とすべきです。