(昆虫料理研究家:内山 昭一)

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徳島の高校の昼食で、食用コオロギの粉末を使った食材を希望者に提供したことに端を発する、昨今のコオロギ食騒動。陰謀説まで飛び出す事態に、昆虫食の普及を目指すNPO法人昆虫食普及ネットワーク理事長でもある内山昭一氏がさまざまな懸念に答える。(JBpress)

コオロギだけがなぜ危険?

現在、日本ではいちばん多く出回っている昆虫食が、コオロギです。その理由のひとつは、雑食なので餌の選択肢がいろいろあることです(穀物や野菜くずなど有機廃棄物)。また、養殖しているコオロギは熱帯原産なので、日本のコオロギと違って室温30℃ぐらいを保てば通年飼育が可能です。さらに飼育が容易で発育期間が約1.5か月と短く、サイズも大きいことがその理由です。

昨今、コオロギ食をめぐってネットを中心に、「健康に悪い」「コオロギ市場に血税が使われている」などの騒動が起きています。

そのほとんどは根拠のないものです。ここでは「コオロギを食べるのは心配」という懸念と、コオロギ食に関連した情報の真偽について、弁明をしたいと思います。

ただし、コオロギに限らず昆虫は甲殻類アレルギーを引き起こすアレルゲンのトロポミオシンというタンパク質を持っています。ですからエビやカニでアレルギーを発症する人はコオロギなどの昆虫類は食べないほうがいいでしょう。

コオロギをめぐる7つの懸念に答える

●好気性細菌、芽胞形成菌などを含むので安全性が心配

これらの菌類はコオロギに限らずあらゆる動植物に含まれているものです。好気性細菌は加熱殺菌すれば死滅します。芽胞形成菌は高温に強く、加熱しても死滅しない場合があるため、残った場合は発芽しないよう速やかに冷蔵するなど、温度管理に注意しましょう。

●ボツリヌス菌が心配

やはり芽胞形成するボツリヌス菌も自然界に広く分布しています。食用として十分衛生的に飼育された養殖物を加熱殺菌した製品であることを前提とする限り、リスクは他の食品と比べて高いわけではありません。また、他の食品と比べてコオロギにボツリヌス菌が特に多く含まれているという報告はありません。寄生虫も加熱すれば殺菌されます。

生魚にも寄生虫は多数含まれていますがあまり気にせず食べています。たとえば日本では刺身など生食文化があることから、アニサキスなどの感染リスクは否めません。

アニサキス自体は加熱すれば死滅しますが、人によっては加熱してもアニサキスアレルギー反応を引き起こす場合があります。加熱殺菌したコオロギに生魚以上のリスクがあるとは考えられません。要は摂取量の問題で、コオロギを大量に食べれば危険性が生じます。それはどの食品にも言えることで、コオロギだけが特別というわけではありません。

●重金属類(カドミウムなど)生物濃縮が心配

コオロギの飼料である魚粉や穀物に重金属が含まれている可能性がないとは言えません。しかしこれは、魚粉や穀物を食べている鶏や魚も同じ条件で、コオロギに限ったリスクではありません。

●発がん性があるかもしれないのが心配

コオロギに含まれるキチンに特別の発がん性があるのではという声がありますが、そのようなことを立証した論文はなく、根拠のない杞憂と考えて差し支えないでしょう。コオロギに含まれるキチンはエビやカニ等にも多く含まれており、これらが発がん性の高い食品であり危険だとは全く認識されていません。

●ゲノム編集コオロギが心配

ゲノム編集食品が消費者に届くまでには、各省庁(農林水産省、厚生労働省など)への相談および届出が必要です。実際にこのフローを通過して販売可能な状態になった食用の品種はトマト、マダイ、トラフグの3つのみ(2023年2月時点)です。

●酸化グラフェンが含まれているのが心配

酸化グラフェンは人体に有害な物質で食物にも含まれていることが確認されています。 ただし酸化グラフェンには当然ながら自己複製機能はなく、少量を吸い込んだ場合でも数週間で代謝して排出されるとする研究結果が報告されています。コオロギが酸化グラフェンを大量に含んでいるという報告はありません。

●プリン体が多いのが心配

コオロギが他の食品に比べてプリン体が10倍多いという報告はありません。むろん大量に食べれば痛風等につながる恐れがないとは言えないでしょう。ただこれはコオロギに限ったことではありません。

日本人の体にコオロギは合わない?

コオロギはイナゴやハチノコのように昔から食べられていないので、日本人の体にあっていないのでは、という質問もよく受けます。たしかにコオロギを食べたという話はあまり聞きません。しかし時代を遡って調べてみると、100年ほど前の1919年に農務省の三宅恒方によってまとめられた『食用及薬用昆虫ニ関スル調査』に「こほろぎ類ノ成蟲及幼蟲」としてコオロギ食が記載されていました。

「漢方医学大辞典」にコオロギが微毒、妊婦不可という記述がありますが、「漢方医学大辞典」のもとになった中国の明の時代に書かれた「本草項目」では「微毒」「妊婦に禁忌」の記述はありません。最新の研究でも毒性がないことが立証されています。

「コオロギの経口毒性の研究と皮膚感作試験」(アメリカ国立医学図書館)

ただし妊婦は口にする食べ物について特に気を付けなければならないので、コオロギを積極的に食べることはしないほうがいいでしょう。

聖書が書き換えられたのも陰謀?

2017年、聖書がコオロギは食べて良いと書き替えたのはどうしてか、ここには何か意図があるのではないか、という発言もあります。

これは旧約聖書のレビ記で「アルベ、サールアーム、ハルゴール、ハーガーブ」の4種類は食べてよいと記しているところです。これらはサバクトビバッタのことで、密集すると相変異をおこし飛蝗(ひこう)となって大移動し緑を食べつくして大きな被害をもたらします。これを蝗害(こうがい)といいます。

聖書は実用書的要素が色濃く、駆除するため相変異するサバクトビバッタを食べて良いとしているのです。相変異したバッタは美味しくないのですが、殺虫剤のなかった古代では最良の駆除手段だったのでしょう。

蝗害のほとんどない日本では漢語の「蝗」を「いなご」と訳し、聖書でも長らく「いなご」と訳されてきました。最近改訳されたなかで、その意味で最も適切と思えるのは聖書協会共同訳の2018年版の「ばったの類、羽ながばったの類、大ばったの類、小ばったの類は食べることができる」です。ここからすると相変異しないコオロギとした聖書刊行会の訳は不十分といえます。

コオロギ食事業へ6兆円の助成金疑惑?

拡散している情報に、コオロギ食事業へ助成金6兆円というものがありますが、これは明らかな間違いです。日本政府が策定した「SDGsアクションプラン2021」の予算6.5兆円が一人歩きしたのでしょう。重点事項に「コオロギ」という表記はありません。

国のムーンショット型農林水産研究開発事業の関連予算は1.6億円(2022年度)です。このなかに「食品残渣等を利用した昆虫の食料化と飼料化」「地球規模の食料問題の解決と人類の宇宙進出に向けた昆虫が支える循環型食料生産システムの開発」などタンパク資源としての研究テーマはありますが、コオロギ食事業に特化した補助金ではありません。

農林水産省の予算は総額で2.3兆円(2022年度)です。そのうちのフードテックビジネス関連の予算は1億円ですが、これは昆虫食に限った補助金ではありません。

農林水産省にはコオロギ養殖に特化した支援制度はなく、養殖業者が定めた経営計画が承認されれば、ほかの農家と同じように認定農業者として認められ、機械の導入に対する補助金や、低金利融資などの支援を受けられるようになるとのことです。

専門家らによるリスク評価

コオロギの安全性について、こんなデータがあります。

EUでは1997年5月15日まで食習慣のなかった食品または食品原料を「新規食品(Novel Food)」と規定し、欧州食品安全機関(EFSA)が専門家らによるリスク評価を行い、その安全性などに関する科学的な情報提供を行っています。

欧州食品安全機関は2022年、コオロギはアレルギー反応を誘発する可能性以外、ヒトの消費に対して安全であると結論づけています。それを受けて欧州委員会は、ミールワーム、トノサマバッタに続き、コオロギを「新規食品」として正式に認可しました。昆虫を食べるか食べないかは消費者の自由な選択に任されており、昆虫は新たなたんぱく源ではなく、昔から世界各地で食べられてきた食べ物、というのが欧州食品安全機関(EFSA)の基本的な考え方です。

日本でも農水省から委託された「フードテック官民協議会」に属する「昆虫ビジネス研究開発WT」があります。ここで2022年7月に「コオロギの食品および飼料原料としての利用における安全確保のための生産ガイドライン(コオロギ生産ガイドライン)」が作成されました。

食文化の多様性の復権

徳島の高校でのコオロギ試食体験は子供たちが新たな食の選択肢を知ってもらう良い機会だったと思います。この試食は調理師をめざす食物科の生徒からの提案がきっかけと聞いています。

食べたい生徒が試食したもので、全員一律に給食として提供されたものではありません。ちなみにメニューは一回目が「コオロギパウダー入りカボチャコロッケ」、二回目が「コオロギエキス入り大学いも」でした。美味しそうなので作って食べてみたいと思っています。

東南アジアやアフリカなど熱帯地域ではコオロギをはじめさまざまな昆虫が昔から日常食べられている普通の食材です。日本でもつい昨日まで昆虫は“美味しいタンパク源”として食べられてきました。いまでも長野など地域によっては貴重な伝統食として愛されていますし、このところ売り上げが伸びていると聞いています。

食べる、食べないは個人の嗜好ですが、コオロギ食を全否定することはその国や地域の食文化を蔑視することにならないでしょうか。2013年のFAO報告には、そうした地域に根差した昆虫食文化を環境面や栄養面、そして安全面から評価し、維持・拡大することで、貧困と栄養不足を解消するねらいがあります。

「美味しくて安全」が普及の決め手です。そのためには受容傾向(食物新奇性嗜好)の強い消費者への働きかけが重要です。あるアンケートでは9割が「昆虫食を避ける」と答えたそうです。逆に1割は「食べてみてもよい」と考えているのではないでしょうか。

日本人の1割1250万人が食べて「うん、これはいけそう!」と思ってもらえたら、きっと嫌悪感の壁も乗り越えられると思います。これからも五感(視・聴・嗅・味・触)をフル回転して楽しめる、多様な食材としての昆虫食の醍醐味を多くの人に伝える活動を、日々続けていきたいと思っています。

(編集協力:春燈社 小西眞由美)

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  初体験なのに猟に出てみたら疼く本能、「やっぱりヒトの先祖は狩猟民族だ」

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葉の上に乗ったコオロギ 写真/アフロ

(出典 news.nicovideo.jp)

𠮷川晃司のコメント

「コオロギは一部の人にはアレルギーを引き起こすことがあります。安全かどうかとか高たんぱくだのそういうことじゃなく、食べたくないから食べない。なぜここまでゴリ押しするのか不思議です。」

<このニュースへのネットの反応>

分かってて見ないふりしてるのか、それともガチで分からないのか知らんけどさ、コオロギとか気持ち悪いから食いたくないだけだって何度言や分かるんだ? 危険性は無いだの低コストだの多様性だの御託並べてりゃ世間が受け入れると本気で思ってんなら、徳島の生徒の保護者の前でこの記事と同じ寝言をほざいてみやがれ。

全否定されてるのは既存の昆虫食じゃなくて、必死こいてコオロギを推す不気味な勢力だろ

美味くない(漢方的な風味)鶏とエサの効率は大差ない・・・ゴリ押しする理由が分からん。デブのユーチューバーが未利用魚について偉そうに説教してるけど、利用されないのはそれなりの理由があるのに(´・ω・`)

…………………………じょうじっ!

必死だな

専門家っぽいから、共食いをするので多数の同時飼育が難しくてバッタに比べてコストが高い点についても是非

必*ぎるだろ。呆れるよ。

言えるところだけでも報告はありませんを繰り返して数値にしてないから直ちに影響はないレベルのうさん臭さになっとるわけだが

フグの肝みたいな毒物でも手を尽くして食ってきた先人達がそれでも敢えて食わなかった意味を考えるとなぁ。ちょっとね。

そもそもなんでコオロギに拘るのか不思議なんだがな。小さいワーム類じゃいかんのか?ってか日本ならイナゴでいいじゃん?

金額の問題で血税が入ってるのは事実じゃん

西暦が2000年以上も続いてメジャーにならなかったんだからお察しだろ

JBが擁護を始めたっつー事は、背後に誰が居るのか透けて見える。

食料危機でもなんでもないし、それどころかコスト激高で逆効果なのに、SDGsとか言って今まで食品として使ってこなかったものを、税金まで使ってゴリ推しすんのはなんで? って話なんだけど? それに「他の食品でもおなじ危険性はあります」って、それが5個も6個も重なれば、それは有毒って考えるんだわ

だ~か~ら~「コオロギを食べるにいたって、X染色体に異常をきたすことが立証されている」と言う米国論文について反論を聞きたいのだが?それに、コオロギ食のコオロギは、遺伝子だったか?弄った「バイオコオロギ」でしょ?猶更怖いんだが…。

せめて、記事を書いて費用を少しでも回収しようとする研究家

毒なんでしょ?食べさせようとするのはなんで?

他人なんてどうなってもいいから裏でがっつり金儲けしようって魂胆が見えすぎててkm。そんなとこが絡んでる食材なんて、安全性がいくら高くてその他利点がいくらあっても食べる気になれないんだよ。逆にコオロギ売ってるとこと推してくるとこはそういうとこと絡みがあると疑って近寄らないことにするわ。わかりやすくて助かる。ありがとな。

なんや今度は本当に国民総出で国会包囲されたいか?

「漢方医学大辞典」にコオロギが微毒、妊婦不可という記述がありますが~もとになった「本草項目」では「微毒」「妊婦に禁忌」の記述はありません←これ、時代が下ってやっぱヤバいってなっただけじゃね?

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