児井正臣氏の著書『自然災害と大移住――前代未聞の防災プラン』より一部を抜粋・再編集し、令和の日本に吹く「逆風」について考えていきます。

逆風に帆を張って新しい夢へ

平成は失われた30年と言われているが、何もしなかった30年と言うよりも、無風の時に帆を上げても船が進まないようなものだった。

この間の政策の誤りを突く書物など多くを読んだが、こういう時は何をしても効果がでない、そういう時代だったのだと筆者は思っている。

平成末期から令和にかけて、今度は逆風が吹き始めている。

でも、逆風でも上手く操船すれば船は前進できるはずなので、風が吹かないよりは良い。前進するためには、逆風をうまく利用するように帆を張ることである。

逆風とは人口減少の激化であり、それに伴い経済活動の足を引っ張る空き家など不良資産の急激な増加を含む高度成長期に造った大量のインフラの劣化であり、自然災害の多発である。

東日本大震災の記憶もまだ消えることのないここ数年、毎年のように日本のどこかで記録的な豪雨による洪水災害が発生しているし、南海トラフの大地震も刻々と近づいている。

そこへもってきて今回のコロナ禍である。これらに対する国や地方自治体の対応には多くの課題が生じ、さらにそのための財政負担も増し、すでに先進主要国中最悪となっている財政状況をさらに悪化させている。

また行政改革の名のもとに役所などのスリム化が進んだ結果、自然災害時などの対応が問題視されて来ている。

本来はそのようなときのための余裕人員を考えある程度の冗長性(リダンダンシー)をもたせておくべきだったのが、これも財政上の理由から極限までカットされてしまった。

もっともこれは財政事情だけではなく、役所の非効率な制度や仕事ぶりを叩くことで「受け」を狙ったメディアや一部議員のポピュリズム的な言動に国民が乗せられたという面もないではない。

なんでもカットさえすれば良いものではなく、本当に必要なものはきちんと、余力も含めて確保しておかなければならない。

本来ならば行政側がそれを強く訴え続けなければいけなかったのだが、そのようなポピュリズムに役所側が委縮して、言いたいことも言えない状態になっていたということもあったのかと思う。

「特別給付金10万円」はただでもらえたわけではない

経済の不振は、それが財政の実質的破綻につながり、そうなると新しいことが何もできなくなり、ますます世界から遅れることになる。

貧すれば鈍するであり、国民との信頼関係も失われる。河川改修や堤防のかさ上げなどに使う国の治水予算は2000年度ごろまでは年1.3兆円程度に達することもあったのに対し、現在は1兆円を下回る水準にとどまっている。

それなのに自然災害は増えてきている。何をするにも金が要るのであり、その金は本来は国民が負担するものである。それなのに政府も野党もメディアも国民負担のことを言わない。

コロナ禍での特別給付金10万円だってただでもらえるわけではなく、いつかは国民にはね返ってくることを誰も言わない。財政とは国民が自らの所得の一部を公共サービスに回しているものだ。

このことを曖昧にして国際的に最低水準の税負担のまま赤字財政を続けたツケが、国際的にも歴史的にも最悪の政府債務(昨年度末1115兆円)となっている。

いつの時代も負担増は不人気策である。それを政治家が声高に唱えるには勇気がいるが、国民もそろそろ目が覚めないといけない。国も言いにくいことを言おう。国民もきちんと聞く耳を持とう。

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児井 正臣

1968年3月 慶応義塾大学商学部を卒業(ゼミは交通経済学)。

1968年4月 日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。

1991年12月 一般旅行業務取扱主任者主任補の資格を取得。

(※写真はイメージです/PIXTA)

(出典 news.nicovideo.jp)

<このニュースへのネットの反応>

それはその通りだが、国民のだれもが経済や国家運営に関する知識を持ってるわけじゃない。国民の多くが給付金をそのまま貯蓄に回し、思ったような経済的効果が得られなかったのは、明らかに政治家と官僚の責任だが、国民がそれを叱責する唯一の方法は選挙であり、国民が自民党を選んでいる以上、国民は彼らを許したのであり、責務を自らが引き受けることを許容したということだ。

あらゆる施策が税金ないし国債から出てるなんて今更だろ、与党の金のムダ使いィィィ!!財源埋蔵金ンンンン!!って吠えた野党が政権交代時にやったことが増税にバラ撒きに堤防建造をとりやめさせて国民を溺死させたことだったわけだが寝言だわ

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