地球温暖化防止をうたう環境保護団体の活動が、欧米を中心に過激化している。明星大学准教授の浜野喬士さんは「世界が終わるかどうかの瀬戸際なのだから、一切の現行の法は無効、あるいはより高い目的のために『踏み越え』ていいと、彼らは考えている」という――。(後編/全2回)

■「環境的黙示録」という強い思い込み

「市民的不服従」を解説した前編に続き、後編の本稿では、ラディカルな活動を展開する「ジャスト・ストップ・オイル(JSO)」や「最後の世代(LG)」といった環境団体の行動を読み解くもうひとつの鍵として「環境的黙示録(Environmental Apocalypse)」という概念を導入してみたい。

黙示録(Apocalypse)あるいは終末論(Eschatology)とは、私たちが世界が終わるその直前、瀬戸際にいる、という思想である。これにはさまざまなバージョンがある。

環境的黙示録とは、おおむね次のように説明できる。「気候変動によって、この現在の世界は終わる/あるいはその瀬戸際に私たちはいる。待っているのは完全な破滅か、救済かである」という主張だ。

環境的黙示録にはさまざまなバージョンがある。第一の分岐点は、世界が終わった後に何が来るのか、についての考え方である。完全な無、あるいは絶望に満ちた新しい世界が来ると説く者もいれば、化石燃料から解放され、あらゆる差別や抑圧が消滅し、肉食が廃止され菜食が普遍化した「真の環境的ユートピア」が来ると主張する者もいる。

さらにそれぞれが描く未来に応じて、「世界の終わりは阻止すべきだ」「いやむしろ加速すべきだ」「人類全体を救うべきだ」「目覚めた一部の民だけを救えばいい」といった、運動の方向性の違いが生じてくる。

しかしいずれにせよ、現在のこの世界がこのままの状態で続くことはない、という認識では、環境的黙示録論者は一致している。われわれに残されているのは、大変革か破滅かの二択であり、かつ世界が終わるかどうかの瀬戸際なのだから、一切の現行の法は無効となる、あるいはより高い目的のために「踏み越え」が可能になると、彼らは考える。

■活動家たちのただならぬ切迫感

JSOやLGのメンバーの証言には、こうした環境的黙示録の傾向が散見される。2022年3月にプレミアリーグのピッチに乱入し、自分をゴールポストに縛りつけた20歳のJSO活動家は、ただならぬ切迫感とともに次のようなコメントを残した。「もし私たちが気候の制御を失うならば、そして私たちは今まさにそこに向かっているわけだが、私たちはすべてのものを、そしてすべての人を危険にさらすことになる」。

同年10月、モネの『積みわら』にマッシュポテトの粥をかけたLGのメンバーは、絵の前で次のようにアピールした。「人々が飢えています。人々が凍えています。人々が死んでいます。私たちは気候のカタストロフィの中にいるのです。(中略)あなたがたが耳を傾け、これまで通りのことを続けなくなる時はいったいいつ来るのでしょうか?」。

JSOやLGは、欧州やアメリカ、オーストラリアなどの9団体とともに、「A22ネットワーク(A22 Network)」という連携を作っている。このA22ネットワークの「宣言文」(2022年4月)も、徹頭徹尾、環境的黙示録の雰囲気に満ちている。「われわれは旧世界の最後の世代(Last Generation)である。(中略)旧世界は死にかけている。私たちは最後の時間のうちに、最も暗い時間のうちにいる。(中略)私たちがいま為すことが、この世界と次の世界の運命を決する」。

■過去の環境運動でも見られた思想

いずれにせよJSOやLGのメンバーたちは、ある意味で「感受性」が強く、また「真剣」であるため、ただならぬ形で切羽詰まっている。この切羽詰まり感、危機が目前に迫っているという感情を、ここでは「窮迫性」と呼ぶことにしよう。

この窮迫性は最近になって見られるようになったものではなく、核実験反対運動から出発した初期の「グリーンピース」や、木に釘を打ち込むことで伐採コストを高め(伐採の前に一本一本調査が必要となる)、開発に抵抗するという手法で一世を風靡(ふうび)したラディカル環境団体、「アース・ファースト!(Earth First!)」の環境的選民思想などのうちにも見られた現象である。

■法の踏み越えがむしろ「道徳的義務」に?

さて、「市民的不服従」として許される「法の踏み越え」の範囲は、「窮迫性」の度合いに比例する(少なくともJSOやLGのメンバーの一部はそう考えている)。気候変動をめぐる危機的状況が『旧約聖書』「創世記」の「大洪水」にも相当するものだとすれば、法の踏み越えは、むしろ道徳的義務ないし神学的義務となる。

JSOやLGを批判的に見る人(そこには私も含まれる)は、彼らを「おかしな人」たちと考える。しかし気候変動を並々ならぬ「窮迫性」で捉えるJSOやLGのメンバーからすれば、環境的カタストロフィを前にして自分たちと同じような行動をとらぬ人たち(社会の多数派としての「われわれ」)こそが「おかしな人」である。彼らの目には「われわれ」は、「箱舟」を作るノアを「嗤(わら)う」人々、つまりノアの周りに存在していたであろう人々――最終的に大洪水にのみ込まれた人々――のように映るのである。

■運動のキーパーソンの人物像

ロジャー・ハラムについて考えることは、環境的黙示録が市民的不服従をいかに「汚染」しているのかを見極めるための好例になるだろう。彼はXRの実質的創設メンバーの一人であると同時に、JSOの主要メンバーの一人である(彼はTwitterで1万3000人ほどのフォロワーを持ち、YouTubeに自分のチャンネルも開設している)。

1966年生まれのハラムは、もともと小規模な農業経営者だったが、彼の言うところによれば、気候変動により家業は破綻し、その後、環境・平和活動家として運動に関わりつつ、キングス・カレッジ・ロンドンで市民的不服従を研究をしたという。

2019年、彼はヒースロー空港拡張反対運動の一環として、ドローンを空港上空に飛ばそうと計画し、逮捕された。その獄中で書いたのが『若者たちへのアドバイス、君たちは全滅に直面している(AdvicetoYoungPeople,asyouFaceAnnihilation)』というパンフレットである。

このパンフレットでハラムは市民的不服従やキング牧師などに言及しつつ、自身の来歴についても語るのだが、気候変動とその帰結を語る段になると、記述はまさに環境的黙示録というべきもの、しかもそのもっとも極端なバージョンに変化する。気候変動の破滅的帰結、海面上昇による世界の沿岸部の破綻、食料危機といったかたちで、世界の終わりが窮迫性とともに描かれる。

さらに彼は、政府や企業、中産階級はもちろん、「グリーンピース」やリベラル左派、さらには急進的左派も総否定する。とにかくハラムの考えるかたちでの直接行動以外はすべて滅びの道、全滅の道なのである。

■預言者的な語りで学生を扇動

「人々は店や家に押し入り、持てるだけのものを持ち去り、立ちはだかる者を殺すだろう。社会の崩壊の終着点は、あらゆる都市で、あらゆる地域で、あらゆる通りで演じられる戦争である。これが君たちの世代に起こるであろうことである」――。ハラムがこうした預言者的な語りで引き出そうとしているのは、若者の理性や熟慮ではなく、気候変動への直観的な恐怖、怒り、「窮迫性」なのである。

ハラムはその後、実際に複数の大学で講演活動を行い、JSOに大学生を勧誘した。また2022年1月のグラスゴー大学での講演では、学生たちに対して、気候変動と戦う「革命家にならねばならない」と述べ、扇動したと言われる。

■「法を超えた正義はある」という主張にどう反論するか

JSOやLGを批判するならば、「あなたたちのやっている行為は違法行為だ」という言葉では届かないだろう。というのも彼らは「違法行為上等、法を超えた正義はあるのだ」というスタンスだからである。

むしろこう言うべきである。「あなたたちの活動は市民的不服従の正当化の範囲と歴史を逸脱している、あなたたちの行動は市民的不服従を僭称する偽物だ」と。

このように批判しないと、私たちには、法に抗う余地がなくなる。歴史の各所で見られるように、法も時には暴走する。市民的不服従というカードをまるごと捨ててしまえば、私たちは「悪法もまた法なり」の言葉だけが支配する世界を生きなければならなくなる。

マハトマ・ガンディーは1930年に有名なデモ、「塩の行進」を行い、数万人の逮捕者を出したが、その際彼は伝統的な仕方で塩を作るパフォーマンスを行い、公然とイギリスの塩の専売に反逆してみせた。しかしこの行為も、当時の法律では「犯罪」だったわけである。

私たちが自分たちの世界に、きちんとした形で不正への抵抗の余地を残したいのであれば、市民的不服従の範囲を丁寧に定めつつ、それを確保していくことが必要である。そのためにはJSOやLGに漂う環境的黙示録などの危険な傾向や、市民的不服従の濫用などをきちんと指摘し、彼らの主張に軽々しく共感してみせることや、彼らの行動を擁護することを慎まなくてはならない。

■極論に引き裂かれる社会を救うには

今回の問題について、私は次のことが重要だと考える。

1.まずは議会の中の民主主義にまだできることがあると信じ、立法、政策といった民主主義の王道で粘ってみることを重視するべきだ。

2.次に議会の中の民主主義が機能不全に陥っている場合にやむを得ず行われる、自己抑制的で非暴力的な市民的不服従、つまり、つねに自己が誤っている可能性を疑い、自己点検を怠らない市民的不服従については、正当に評価するべきだ。

3.そして抑制を欠き、自分たちの正義の無謬性を狂信し、カルト的な要素すら含む活動については、そこに市民的不服従の名を認めず、距離をとるべきだ(JSOやLGらの思想的背景を研究することは、ここに貢献することになる)。

これらはすべて「凡庸な」提案である。たが、世間やネットの意見が両極端に振れ、それに埋め尽くされる場合には、「凡庸」は「中庸」に姿を変え、よりよき社会の実現のための一助となるかもしれない。

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浜野 喬士(はまの・たかし)
明星大学准教授
1977年、茨城県生まれ。早稲田大学法学部卒業。早稲田大学大学院文学研究科博士課程にてカント、環境思想、動物論を研究。専門はドイツ近現代哲学、社会思想史、環境思想史。主な著作に『カント「判断力批判」研究』(作品社、2014年)、『エコ・テロリズム』(洋泉社、2009年)などがある。

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ロンドンのペントンヴィル刑務所の前で、収監された仲間の開放を訴えるJSOの活動家たち(2023年2月11日) - 写真=AFP/時事通信フォト

(出典 news.nicovideo.jp)

𠮷川晃司のコメント

世界が終わるという危機感を持ち、環境保護団体がテロ行為に走るのは正しい手段なのかとは疑問です。環境教育や啓発活動を充実させることが、今後の解決策となると思われます。

<このニュースへのネットの反応>

なるほどね。完全にカルト宗教と同じなんだね。きっと、自分たちは努力しているのに周囲の人間は誰も努力していないという被害妄想的な不信感に突き動かされているんだろう。明らかに精神病の一歩手前だね。

要するに「人間」が嫌いなんだよな。人間社会に馴染めない「自分」も含めてさ。

キリスト教的価値観だと、人間は万物の中でも特別に神に似せて作られた存在だから、無意識に自然を下に見てるんだろうな。だから「救わなきゃ!」ってなる。自然からすれば余計なお世話

欧米人は教育水準がゼロのアホが多いからな

でもそいつら乗り物で移動してスマホ使って家で冷暖房使ってスーパーで買い物してetc…文明を享受してんだろ。ただのガキの戯言じゃん

はあ、世界が終わるか、ノストラダムスの時もそう言われたな~終わる終わるって不安煽るニュースって無くならないよね。

法が正しくないことや司法機関が正義を足蹴にすることなんぞしょっちゅうあるしそれを変えようと訴えること自体には何一つ問題無いが、法を改正するために民主的手続きを取らず暴力に訴える行為に正義がないだけ

終わる終わる詐欺・黙示録スキームは遥か古代から現代も蔓延しっぱなし。人には制御できないと言える。ユダヤキリストイスラムだけではない。仏教も末法が永い

日本が先だと…

お前だけで終わってろ、他人を巻き込むな

自分だけ世界の危機に立ち向かう映画のヒーロー気分に浸ってるんだろうね。

自分たちは正しくて法が間違ってるから暴力で踏みにじって良いとか言うのなら、あらゆる権利をはく奪してやればいい。あとは害虫駆除の時間。

「それって貴方の妄想ですよね」を書かれている対象と書いている人に送りたい。

ロシアが核を2つ3つぶっ放せば世界は終わるだろうけど、今んとこそんな兆候ないしな~ はよやれよ腰抜けプー公

世界が終わるのになんでそんな無駄な事するんだ?って逆に思うが?

なんだカルトのお話か。おっかない

明日世界が終わるとしても、その「世界」とやらは人間を中心とした世界であって地球や宇宙ではない。例え巨大隕石が地球に降って来たとしても深海の生物には何の影響も無いんだから。だから自然の為と言いながら法を*て自然を破壊するのはただのバカ。

いつもの特定の国だけで行われるネガティブキャンペーン

*だからちょっと複雑な陰謀論や*みたいな理想論を見たら自分は真実を知った気になっちゃうんだね。そんで他人は目覚めていない愚者に*の目からは映るんだろうな。救いようがねぇな、環境やらにはまる*って。

同士を増やしたいんじゃなくて、人を*にしたいだけの集団が指示を得られると思ってるのがすごいな。でも貧困街では効果てきめんなんだよな。日本でも貧困層が増えてきたから、目覚めちゃった系が急激に増殖した。

つまり無職の負け組が、一発逆転で勝ち組になるために飛びついてるってだけだろ。粛々と通報して法律で裁くだけ。お前は*な負け組のままだと分からせるしかない

勝手に世界を終わらせるのも、バカとか言って見下すのも環境保護団体とやらとプレジデントオンラインの妄想だろう。勝手な妄想に無関係な他人を巻き込んで、迷惑行為や犯罪行為を正当化するな。

世界が終わると言いながらむだな時間使う余裕があるんですね、余命宣告の人が君ら見たらきっと道連れ(害悪)にしたいと思う■2000年問題でも学者や博士のエセがわいて犯罪率上げたんだよな

自分たちを選ばれし民だと思っているアホ、それが極左

テロカルトが表の看板だけ宗教から活動団体に変えたって話?

プレオン記事で、「本当の理由」、「根本原因」みたいな題をつけたものは読む価値無い、あると思います。まず文字で飯食うからには、理由、原因を題に具体的に書いて読者の目を引けよ。理由、原因といった語を指示語や代名詞みたいに使って誤魔化すな。

環境を守らなきゃ!でも、世界を救うんだ!でも良いんですけど、それでやってる事がテロって意味がわからないですね。

そう言えば「世界は破滅へと向かってます」ってスピーカーでうるさく言ってた人達どこに行ったのかしら?

こいつらの中では世界は終わるんやろ、こいつらの中ではな。うちら巻き込むのやめてもらえますかね?自分らで勝手に絶望してサヨナラするならいいだけなのにな。まぁ何か承認欲求的なものを満たしたいだけやろ。

なぜか特定の国では活動しない活動家は信用できない。

別に煽りでも意地悪でもなく至極真面目な個人的意見なんですが、世界が終わってなにか問題が?

やっぱ欧米人は屑だしキリスト教は邪教だわ

自分達の資産や命を使うんじゃなくて自分に関係ない物を標的にしてる辺りでただのテロリストなんよ

テロを未然に防ぐ為に、そっちに金をかけなくちゃいけない。むしろ自然保護は遠のく。

環境団体「じゃけん美術品とかにトマトスープとかぶっかけて世界に認知させんといけん」w

法の踏み越えが正義のように振る舞うか。BLM運動や慰安婦支援団体とも共通点あるな

お前がそう言うならそうなんだろうお前ん中ではな定期

終末論とかノストラダムスも社会に閉塞感とかあって浪漫?みたいなのあったけど、「終わるから何してもいい」なんて免罪符じゃなかったような...まあオウムみたいなのも出てきたが

世界がもうすぐ終わるなら好き勝手するかなぁ…やりたい事するわ。だから保護団体も好き勝手してるのかな?自然も社会も大きなお世話だと思う。海…大海…大気ですら地球の表層なだけでそれに比べたらだいぶちっぽけだと思うけど…。それで滅ぶなら自然の循環でいいんじゃない?

どうにかしたいなら、さっさと宇宙に進出するしかないんで、足引っ張ってるだけですな。

自分は賢いと洗脳されてるバカ?

環境改善を実行しているわけではなく人間社会に当たり散らしてるだけだからな。

海水準が上がるって縄文時代にも経験してるし、最近は十万年ごとの海水準変動サイクルで一回ずつ起こってる。それで世界が終わるならもう終わってる。仮にそれを世界が終わると言うなら、十万年サイクルで世界がもう一巡する。それを知って覚悟があれば人は幸福だって神父も言ってたじゃん。

要は自分が終わっているから世界が終わるって思いたいって訳か○○すごい!→俺すごいの逆バージョンだな

世界がすぐ終わるならテロなんてしてないで自*なさい。

野党支持者とかにもよくあるけど「大衆を味方につけて支持者稼がなきゃいけないフェーズなのになぜか大衆にケンカを売ってしまう」活動家はマジで無能な働き者だよね

そのマッシュポテトを飢えてる人に食わせてやれ

こんなに色々と情報やデマに触れちゃうと目覚めちゃうよね…中学生くらいにさ

「JUST STOP OIL」と掲げてんのに石油製品の化学繊維の衣類着てるあたり自分がやってる事を全く理解していない

ΩΩΩ<な、なんだってー!?

いいじゃん。その時は皆まとめて滅べば

〇〇不敗、あんたは間違っている!なぜならば、あんたが抹*ようとする人類もまた、天然自然の中から生まれたもの!いわば地球の一部。それを忘れて、何が自然の、地球の再生だ!そう、ともに生き続ける人類を抹*ての理想郷など、愚の骨頂!

 ほんとに世界が終わると思ってるんなら家に帰って家族と落ち着いて過ごせ。

いつどんな原因で終わるのかを論理的にしっかり説明できれば自ずと支持者は増えていくんだけどな、ただの予言がアテにならないことは2000年になった瞬間に周知されたんだから。己の説明力不足で理解されないことを周りのせいにしてるだけじゃん。

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