ETCカードの家族間貸し借りが犯罪に?大阪地裁の判決が引き起こす一億総前科者の危機
■ETCカードの貸し借りは「家族でも違法」の地裁判決
この夏の連休は地震や台風の影響を受け、
さて、高速道路を通行するために欠かせないのがETCカードですが、このカードの利用をめぐって、最近、気になる「判決」が下されたことをご存じでしょうか。
ETCカードの貸し借りをおこなった同居の兄弟と、そのカードで車を運転した知人の計3人が、いずれも「電子計算機使用詐欺罪」(刑法246条の2)で起訴され、有罪になったというのです。
前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。
■夫名義、親名義でも「アウト」になる
この判決の話をすると、多くの人が、
「えっ、家族名義のETCカードの貸し借りは犯罪になるの?」
「うちの家族だって普段から何の疑問も持たずにやってるけど……」
と、驚かれます。
我が家も同じく、私名義のETCカードが挿入された車を夫が一人で運転することは珍しくありませんし、その逆もあります。クレジットカードを持っていない学生ドライバーが、親名義のETCカードを借りて車を運転するケースだってよくあるでしょう。
特に悪気もなく、日常的に行っていることが「罪」に問われてしまうとなると、決して他人ごとではなく、さすがに不安になりますね。
では、3人がそろって有罪となったこの「事件」、いったいどのようなものだったのでしょうか……。2024年5月8日に下された大阪地裁判決(裁判官/末弘陽一・高橋里奈・高矢輝乃)の内容を振り返ってみたいと思います。
■弟名義のETCカードを利用して懲役10カ月になった兄
まず、本件の判決文に記されていた「罪となる事実」は、以下の通りです。
ようするに、兄が弟名義のETCカードを借り、知人の運転する車(
1つ目の「犯行」は、2023年11月、大阪市内の有料道路をCが乗車していない車にC名義のカードを挿入して約9分間走行し、ETC割引を使って「正規の通行料金との差額770円相当の財産上不法の利益を得た」というもの。
2つ目の「犯行」は、同年12月、同じくCが乗車していない車にC名義のカードを挿入して大阪市内の有料道路を約11分間走行し、「差額630円相当の財産上不法の利益を得た」、つまり、2回の走行で合計1400円をだまし取った、という罪に問われたことになります。
判決文の最後には、
「本件は、常習的に行われた一環の犯行であり、悪質である」
と記され、兄のAには懲役10カ月の実刑、カードを貸した弟のCと運転していた知人のBには、それぞれ懲役10カ月・執行猶予3年の判決が下されました。ちなみに、兄のAは暴力団関係者でした。暴力団はクレジットカードを作ることができないという事情もあって、弟名義のETCカードを借りていたとみられます。捜査機関は「反社条項(暴排条項)」を意識していた可能性もありますが、罪名はあくまでも「電子計算機使用詐欺罪」だったのです。
■「警察や検察のさじかげん次第」
立命館大学大学院法務研究科の松宮孝明教授は、今回の判決についてこう語ります。
「Aがこの裁判で実刑になったのは累犯前科があったためですが、そもそも今回の起訴は、警察や検察のさじかげん次第という感が否めず、さすがに看過できなかったため、私も法的見解を意見書にまとめて裁判所に提出しました。現在、弁護団は控訴の手続きをして、大阪高裁の判断を待っているところです」
そもそも、同居の家族のETCカードを借りて走行することが、なぜ罪になるのでしょうか。
松宮教授によれば、多くの道路会社は、ETCを利用する際、カード会員本人が乗車することを規則で定めているとのこと。私自身、長年ETCカードを使っていながら、これまで気にしたことはなかったのですが、あらためて各社のサイトを確認したところ、「カード会員本人が乗車するように」という文言が記載されていました。
たとえば、阪神高速道路の場合、営業規則の17条4項では、「ETCカードによる阪神高速道路の料金の支払いは、通行の都度、クレジットカード会社から貸与を受けている本人が乗車する車両1台に限り行うことができます」と定めています。
■「ETCカード保有者の多くが詐欺の犯罪者にされてしまう」
つまり、クレジットカードに紐づけられたETCカードを利用する場合、クレジットカード会員本人が乗車していない車でETCレーンを通過してしまうと、規則上は、「ETCシステムの電子計算機に虚偽の情報又は不正の指令を与えた」ことになるわけです。
しかし、こうした事例が「電子計算機使用詐欺罪」に当たるとなると、困った問題が生じると松宮教授は指摘します。
「ETCを利用して有料道路を通行する車に、カードの名義人が乗車していなければならないというルールを、はたしてどれだけの人が知っているでしょうか。私も含め、おそらくこれまで多くの人が認識していなかったのではないかと思います。実際に、自分名義のETCカードを他人に貸したことがある人の割合が4割近くに上るというアンケート結果も出ているのです。このような中で、電子計算機使用詐欺罪の成立を認めると、ETCカード保有者の多くが詐欺の犯罪者にされてしまう恐れがあります。この罪が成立するためには、刑法246条の2(*上記)の構成要件の充足と、これに対応する『罪を犯す意思』つまり、故意がなければならないのですが、今回の事例を見てもわかるとおり、関係者にはそのような『意思』はそもそもないのです。でも、今回の判決に倣うと、家族のETCカードを(その家族が乗車していない状態で)利用した人は、起訴されれば前科が付いてしまうのです。こうなると一億総前科ですね」
今回の大阪地裁判決に対する判例解説については、以下『家族内ETC利用に電子計算機使用詐欺認めた裁判例』に詳しく掲載されています。
松宮教授は本論稿を「一億総前科という事態は回避できないのである」と厳しい口調でまとめておられます。関心のある方はぜひお読みください。
■いつ逮捕、起訴されるかわからない事態に…
「一億総前科」……、その中に自分も含まれるとなれば安穏とはしていられませんが、この判決に則れば、道路会社の営業規則が変わらない限り、多くのドライバーがいつ逮捕、起訴されてもおかしくないのが現実です。
家族カードに付帯するETCカードは、家族会員の名義で発行されるので、これさえ発行されれば、貸し借り問題はクリアになるはずです。しかし、現実には、家族カードに付帯するETCカード発行に対応していないクレジットカード会社もあり、実際にはその発行数は少なく、一般的ではないようです。こうした状況を鑑みれば、今回の判決は見直されるべきでしょう。
ちなみに、どうしてもクレジットカードの契約ができない場合は、有料道路の通行料金支払いに限定した「ETCパーソナルカード」を申し込むことができるそうです。
このカードは、東/中/西日本高速道路株式会社、首都高速道路株式会社、阪神高速道路株式会社、本州四国連絡高速道路株式会社の6社が共同して発行しているもので、申込み時に保証金(デポジット)を預託するといった条件を満たせば発行されます。
■「営業規則は、もはや時代遅れで、妥当性を持たない」
今や、無人の自動運転車が走行する時代です。松宮教授は、こうした現状に照らしても、今回の大阪地裁判決は見直されるべきだといいます。
「現在の道路交通法は、すでに『運転者の乗車』どころか『運転者』の存在すらも要求しておらず、運転免許すら不要の『特定自動運行主任者』が、『乗車』せずに自動運転車を遠隔監視することが想定されています。つまり、遠隔操縦をする『運転者』が当該自動車に同乗していることは必要ないと解釈をせざるを得ないのです。このような法状況では、クレジットカード会社から貸与を受けている本人が乗車する必要があるように読める阪神高速やNEXCO西日本の営業規則は、もはや時代遅れで、妥当性を持たないものと考えざるを得ないでしょう」
控訴を受けた大阪高裁は、逆転無罪を言い渡すのか、それとも、地裁の下した有罪判決を支持し、多くのドライバーを詐欺の犯罪者とみなすのか……。裁判の今後に注目したいと思います。
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ジャーナリスト・ノンフィクション作家
1963年、京都市生まれ。ジャーナリスト・ノンフィクション作家。交通事故、死因究明、司法問題等をテーマに執筆。主な作品に、『私は虐待していない 検証 揺さぶられっ子症候群』(講談社)、『自動車保険の落とし穴』(朝日新書)、『開成をつくった男 佐野鼎』(講談社)、『家族のもとへ、あなたを帰す 東日本大震災犠牲者約1万9000名 歯科医師たちの身元究明』(WAVE出版)、また、児童向けノンフィクション作品に、『泥だらけのカルテ』『柴犬マイちゃんへの手紙』(いずれも講談社)などがある。■ウェブサイト
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この記事では、ETCカードの貸し借りが家族間であっても違法とされる判決について述べられています。特に、兄が弟の名義のETCカードを使用し、知人の車で有料道路を通行したことが電子計算機使用詐欺罪に問われ、兄には懲役10カ月の実刑が言い渡された事例が取り上げられています。
この判決は多くの人々に衝撃を与えており、家族間でのETCカードの使用が犯罪になるのかと驚きや不安の声が上がっています。確かに、多くの家庭では日常的に家族間でETCカードを共有していることが一般的であり、この判決が示すような厳格な適用が広く知られていないのも事実です。
記事ではまた、このような法律の適用が「警察や検察のさじ加減次第」であると批判されており、ETCカード保有者の多くが詐欺の犯罪者と見なされる恐れがあると懸念されています。この点については、家族が同乗していない場合でもETCカードを利用することが詐欺罪に該当するかどうか、法律の見直しや規則の変更が求められるところです。
また、自動運転技術の進展に伴い、運転者の存在すら必要としない時代が訪れようとしている中で、現行の営業規則が時代にそぐわないという意見も述べられています。この点については、法規制の柔軟性や現代の交通事情に即した法改正が重要と考えます。
総じて、今回の判決はETCカードの使用に関する法的な問題点を浮き彫りにし、今後の法改正や判例の方向性を注視する必要があることを強く感じさせる内容です。
<このニュースへのネットの反応>
「兄のAは暴力団関係者でした。」記事中に正解が出てるが弟名義で暴力団関係者が使うカードを作った事件っすな
「自分名義のETCカードを他人に貸したことがある人の割合が4割近くに上るというアンケート結果」、「保険証貸すくらい普通にやるだろ、友情を壊す気か」っていってた人いましたよね。いや、普通しないよ。で、このアンケートの対象は?
一億総前科とか大げさだろ。ヤカラモンやセコイちょろまかし野郎はどんどん排除してくれ。
「一億総前科者」は流石に盛りすぎ。明確に事実と異なる大げさな誇張をしないとならない何かしらの事情があるのだろう。
>このままでは「一億総前科者」になる うそ、おおげさ、まぎらわしい。
ただの扇動者
この記者が暴力団員と交友関係にあって、日常的に詐欺行為に耽っていると言う告白文だね、お巡りさんコイツです。
ポイントカードですら規約上は他者への貸与を禁止してたりするんだし、法的に定められているものなら尚更守ろうとする方がまともだと思うんだが バレなきゃセーフ理論はバレた時点で観念しないと駄目でしょ
もう悪用するのに開き直ってるだろ。犯罪者はお前の身内だけだ
暴力団ではない一般の人はこの事件は暴力団関係者だったから有罪判決が出たんでしょう。なのにその判決に怯えるプレオンと柳原 三佳は暴力団なのか?この意図的に印象操作をする記事を書いてるのを見ると堅気とは思えないけど
家族カード作りましょうねで終わる話。このケースだと暴力団関係者が関わってるからそれ以前の問題だが。
>兄のAは暴力団関係者でした。>このままでは「一億総前科者」になるプレオン、自分の周りが反社だらけなのを自白してないか?
「通行料金との差額の財産上不法の利益を得た」が判決理由なのにいつの間にか「貸し借り自体が原因」みたいにすり替えてるな。まぁルール違反ではあるんだろうけど。
まあ、いつものマスゴミ作文よな。
免許取ることができない俺に喧嘩売ってんのか
裁判長「被告は暴力団員であることから自己名義のETCカードを持てないことを認識し、弟が同乗しない状態で常習的にカードを使用していた。弟の了解があったとしても、カード会社が設ける暴力団との取り引きを拒絶する暴力団排除条項をかいくぐる手段で悪質だ」その通りだと思うし、記者はこの暴力団員が支部会長の金東力被告(67)なのをボカす理由は何かね?
こんな記事を書き上げるライターがノンフィクション作家の肩書持ってんの超ウケる
反社と取引しない会社でカード作れない人が借りて使うのはアウトやろ。ただの身内に貸すのとは訳が違う。
運転免許保有者数は一億居ないという笑いどころさん
プレオンは犯罪者の巣窟と。お前らが国批判したいがために勝手に前科者にするな、クソども