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目次
撮り鉄の迷惑行為?ラッセル車を緊急停車させた「雪のかたまり」持ち込みの危険性
北海道北部の町の線路上に雪のかたまりが積み上げられて、除雪作業で走行していた「ラッセル車」が手前で緊急停車するという出来事があった。
雪が積み上げられていたのは、北海道・美深町のJR宗谷線。報道によると、2月1日、約50センチの高さの雪が線路をふさいでいることに運転手が気づいて、20メートルほど手前で急停車したという。
当時、線路上に雪は積もっていなかったため、雪をはね飛ばすラッセル車の写真を撮影するために何者かが、線路外から持ち込んだ可能性があるという。
もし実際に雪を線路上に持ち込んでいた場合、このような行為は法的にどんな問題があるのだろうか。鉄道にくわしい甲本晃啓弁護士に聞いた。
●「列車往来危険」や「業務妨害」などの罪に問われる可能性
――どんな点が法的に問題だと考えられますか?
報道によると、JR北海道は警察に相談しており、警察は「はね飛ばす迫力のある写真を撮影するために、何者かが投げ入れた可能性があるとみて、列車往来危険の疑いも視野に調べる方針」ということです。
まず、列車往来危険について説明が必要だと思います。これは刑法125条に定められた罪で、わざと列車の脱線や転覆などの原因となるような危険を生じさせた場合に適用されます。2年以上の有期懲役という重い刑罰が定められており、ひと言でいえば「重罪」です。鉄道事故がひとたび起きると甚大な被害をもたらすおそれがあるからです。
そして、この罪は「危険を生じさせた段階」で成立してしまうので、今回のように、直前で列車が停止して被害がなかった場合も処罰されます。
――除雪車なのだから問題はなかった、といえないでしょうか?
JR北海道が公開した写真を見たところ、たしかに線路上の雪は人為的に置かれたように感じました。そして、線路上に50センチの厚さの雪が置かれていたということですから、脱線の危険はあったと考えられます。
国土交通省が公開している鉄道事故報告書に、JR上越線で2005年、30〜40センチ程度の積雪で今回と同じ型のラッセル式除雪機関車(DE15形)が脱線事故を起こした事例が記されています。
除雪前の線路には、自然降雪した雪が一定の厚みで覆われています。不自然な雪塊が線路上にあれば、何か障害物が雪に埋まっている可能性があることから運転士は列車の運行を止め、安全確認を余儀なくされます。
もし、脱線の危険がなかったとしても、鉄道の運行業務を妨害している点で、業務妨害の罪(刑法233条・234条、3年以下の懲役または50万円以下の罰金)にあたります。
なお、理由の如何を問わず、線路への立ち入りは、鉄道営業法違反の罪(1万円以下の科料)にあたります。
●社会的な問題を起こす「撮り鉄」は、ごく一部の人たち
――今後どのような展開が想定されますか?
今回の現場には、少なくとも複数の撮影者がいたということなので、誰かが雪を線路上に置いたのだとすると、それを見ていた人もいた可能性があります。もしかすると動画が残っているかも知れません。警察が捜査を進めれば、そういった目撃者の話から犯人が絞り込まれるかもしれません。もし心当たりがあれば、自首をすることをすすめたいと思います。
――こういった事件があるたびに「撮り鉄=悪」という受け止め方が広がっているように思いますが、どう考えますか?
社会的な問題を起こす「撮り鉄」は、ごく一部の人たちです。ですので、安易なレッテル貼りは好ましくありません。本当に困っているのは、健全に「撮り鉄」を楽しまれている方々ではないでしょうか。
インスタ映えなどと言いますが、誰しも映える写真にしたいと思うのはごく自然なことです。それは、鉄道写真も同じです。今回はその列車の特性をより強調するために雪を置いた疑いがある事例ですが、「撮り鉄」をめぐるトラブルのほとんどは、他人の迷惑を顧みずに自己中心的になる行動に出るケースで、その反倫理的な行動が衆目を集めます。
たとえば、鉄道施設(ロープ)を破壊したり、木を切ったり、通行する一般の人に対して罵声を浴びせて追い出したり・・・など枚挙に暇がありません。
よく考えてみると、こうして世間に白い目を向けられてまで作り出した画像は、現実にはありえなかった虚構を写したものです。真実を写すと書いて「写真」です。フィクションである単なる画像は、写真と呼んではならないでしょう。結局、生成AIを使って加工した画像と変わりがありません。邪魔な障害物があっても力ずくで取り除かず、AIで消去した作品のほうが人に迷惑をかけない分、平和的で好ましいと思います。
雪を豪快にはね飛ばしている写真を撮りたければ、大雪の日を待たないとなりません。なかなかそういったチャンスにめぐり会えないかもしれません。だからこそ、真実を写した価値があるのです。雪を線路上に置くのは、ゲーム用語で言うチート行為です。AIで現実と見紛うような画像を生成するのとどこが違うのでしょうか。意味のないことをして、他人に迷惑をかけていることに、気付くべきだと思います。
どんな写真であっても、その一瞬をその場所で撮ったことに価値があります。法律とマナーを守って撮影を楽しんでいただければと思います。
【取材協力弁護士】
甲本 晃啓(こうもと・あきひろ)弁護士
理系出身の弁護士・弁理士。東京大学大学院修了。丸の内に本部をおく「甲本・佐藤法律会計事務所」「伊藤・甲本国際商標特許事務所」の共同代表。専門は知的財産法で、著作権と特許・商標に明るい。鉄道に造詣が深く、関東の駅百選に選ばれた「根府川」駅近くに特許事務所の小田原オフィスを開設した。
事務所名:甲本・佐藤法律会計事務所
事務所URL:https://ksltp.com/
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今回の事件は、「撮り鉄」の一部がどれほど自己中心的で危険な行動をとるかを改めて示した事例だ。鉄道は公共のインフラであり、利用者の安全と鉄道会社の運行を最優先に考えるべきものだ。それにもかかわらず、ただ「映える写真」を撮るために線路上に意図的に雪を積むという行為は、列車往来危険罪に問われる可能性があるほど悪質であり、絶対に許されるものではない。
撮影のためにわざと障害物を作り出す行為は、もはや写真の範疇を超えた犯罪行為だ。仮に脱線事故が起きれば、乗員や作業員の命に関わる重大事故につながりかねない。幸いにも今回は運転士の適切な判断によって被害はなかったが、その危険性を無視して「除雪車だから問題ない」などという意見を持つこと自体が、すでに鉄道を軽視した姿勢の表れだろう。
また、今回の事件は「撮り鉄」の問題行動がエスカレートしていることを示している。これまでにも線路内への無断立ち入りや、通行人への迷惑行為、果ては鉄道施設の破壊まで行う事例が報告されているが、今回のように鉄道の安全そのものを脅かす行為はより深刻だ。こうした行為が繰り返されれば、鉄道会社側も対策を強化せざるを得ず、結果として一般の鉄道ファンまでもが厳しい制限を受けることになる。
本来、鉄道写真の価値は、その瞬間を切り取ることにあるはずだ。人為的な細工を加えた「映える写真」にどんな意味があるのか。ゲームで言う「チート」行為をしてまで得た写真は、もはや現実を写したものではなく、単なる作り物でしかない。そこに誇りを持つべきではない。
鉄道写真を楽しむこと自体は否定しない。しかし、その楽しみ方が他者の安全を脅かし、社会全体に迷惑をかけるものであってはならない。鉄道を愛するのであれば、まずその運行と安全を尊重するのが最低限のルールだ。今回の件を受けて、撮り鉄の間でも厳しい自己規律が求められるべきだろう。
<このニュースへのネットの反応>
人為的なものだとしたら絶対に捕まえて即刻ムショに放り込んでくれ
自分が突入すればいい絵が撮れるのにな
世の中のどんな会社や集団にも先々に自分達が被るであろう損にまで思い至らない輩というのが少々居るものだ
人工的に写真を作っちゃうなら、今流行りの生成AIを使えばいいんでないの。思い通りの迫力が出せるぞ。
手ぬるい対応をしてモンスターを育成し続けたツケが、今こうやって花開いただけ。
宗谷線は地元なので嫌がらせ止めてくれませんかね・・・。赤字が酷いのでこういう事されると本当に迷惑。近年、都市間バスが縮小され始めて来ていて、列車も縮小や廃線されると都市間の移動が困難になる。*共は雪に埋まって春まで出てくるな。
おそらく証拠は出てこないだろうから有耶無耶になっちゃうだろうな。仮に誰かが意図的にやっていたとしたら、そいつは写真を撮るだけのために、その路線を潰すような行動をしていると理解してほしいところだ。まぁ、そんなことを理解できる人間なら、最初からこんなことはしないだろうが